日本人というリスク – 橘 玲
本書では、個人の人生を金融資本と人的資本で説明しています。しかし私たちはたったひとりで生きていくのではなく、誰もが社会(共同体)との関係のなかで人生を始め、成長し、終えることになります。その意味で私たちが持っているもっとも大切な資本とは人間関係、すなわち「社会資本(ソーシャルキャピタル)」ということもできるでしょう。私たちの社会資本は、好むと好まざるに関わらず、日本という社会に大きく規定されています。だとすれば社会資本について考えることは、「日本人であるとはどういうことなのか」という問いに答えることにほかなりません。それはまた、「私はいったなにものなのか」を問うことでもあります。
日本人はずっとムラ社会的な人間関係(世間)に守られて暮らしてきましたが、その窮屈な世界を憎んでもきました。故郷を捨てて都会に出ても、こんどは会社という別の世間に取り込まれて生きるしかありませんでした。しかし今や会社共同体も解体し、私たちは1人ひとりの金融資本と人的資本だけを頼りに、グローバルな史上経済と孤独に相対することを余儀なくされています。
いずれにせよ、私たちは戦後的な価値観を精算して、ポスト3・11の人生を歩きはじめなくてはならないのです。